『ケンくんと僕』

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 デート当日、ケンくんは授業中からそわそわしていた。サユリちゃんの机は廊下側の三列目だった。ケンくんからは二列挟んで、ななめ前になる。ケンくんはサユリちゃんの横顔を見ていた。僕から見てもサユリちゃんはかわいいと思う。このクラスには女子が二十人居るけど、ベスト3には確実に入る。髪は肩までのセミロングで、顔もかわいい。眼が特徴的で大きくクリッとしている。清楚のイメージが漂い、やまとなでしこというフレーズがぴったりな女の子だ。不意にサユリちゃんがケンくんの方を向いた。ケンくんと眼が合う。サユリちゃんはニコッとしてくれた。ケンくんはほんと嬉しそう。もう今日のこれからの事が楽しみで仕方ないといった感じ。僕はどんなデートになるのか楽しみだ。僕なりにいろいろ想像してみる。もしかしたらケンくんはサユリちゃんとチュウするかも。あれ?ケンくんの様子がおかしい。右足を軽くゆすっている。具合でも悪いのだろうか。僕は心配になったが、すぐその心配は解決した。ケンくんは何気なしに右ポケットに手を入れた。どうやら想像を越え、妄想してしまったみたい。ほんと今日のデートが楽しみ。放課後、ケンくんはサユリちゃんより先に学校を出た。他のクラスメートの目もあるから、一緒に学校を出ないで、近くの公園で待ち合わせする事になったのだ。公園に着き、ベンチに腰掛けると、ケンくんは僕を取り出して、時間を見た。今は十二時半になるとこ。サユリちゃんは四十五分に来る事になっている。またケンくんの右足が揺れる。しかし今度は妄想ではなく、緊張みたいだ。ケンくんは両手で顔を叩くと、深く深呼吸した。僕の時計が段々四十五分にせまってくる。ケンくんのドキドキが右手を通して僕に伝わってきた。その時、サユリちゃんが現れた。 「待った?」 「大丈夫だよ。」 「なんかはずかしいね。」 「だね。行こうか?」  二人は一言二言話すと、昼ご飯を食べる為にマックに行った。そこでバリューセットを頼み、向かい合わせに席に付いた。 「今日の数学分かった?」 「ううん。」 「・・・」  あまり会話が続いていない。この状況に僕の方が不安になってきた。この先大丈夫なのだろうか。なにか幼稚園の入園式のお母さんの気持ちだ。この後、二人はカラオケに行った。
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