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《お前は魔術師か?》
そう、私が言葉を発した瞬間。
微かだが、奴の雰囲気が変わった。
それまで聞こえていた昼時の喧騒も無意識に締め出しているのか、ピタリと聞こえなくなる。
そして、長い沈黙の後、彼は口を開いた。
「ふーん、あんたはなんでそう思うんだ?」
不敵な笑みを顔に浮かべ、あくまで軽い調子を保ってそう問い掛けてくる。
「さぁなぁ……、ただ――」
「"灰色のベルトルド"って、知ってるか?」
冷や汗が頬を伝った。
指先がピリピリと痺れ、
喉が詰まり息が上手く出来ない。
その言葉は奴にとって決定的であったようだ。
今までと違い、鋭い、刺されるような感覚を抱かせる雰囲気に変わっていた。
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