竜王会

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凄まじい強さだ。 これは十数年前。今はもっと力を増している筈だ。 これが渡瀬か。 棋譜は文字で書かれているが、その文字にすら強さがにじみ出ている気がした。 だが他のタイトル戦では一手指しただけでささなかったり、意味のわからない悪手を指したり、力を出していないというか、遊んでいるように見えた。 相手を嘲笑うかのように。 俺が全てに決着を着けてやる。 棋譜を頭で並べているうちに、うとうととしはじめた。 眠れない夜は羊を数えるより棋譜を読み上げた方がいいかもしれない。 羊が一匹 羊が二匹 ▲4一飛成△2二玉。 羊が三匹 羊が四匹 持ち駒 金が二枚 銀が一枚。 どうでもいいや…眠い。 いつの間にか深い眠りにおちていた。 薄れた意識の中で声がする。 『龍馬、望むならお前の棋力高めてやる』
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