はじまり

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おっちゃんはいつものように、76歩とついた。 (角筋を通したな…とりあえず様子見か?) 渡瀬も角筋を通す。 そしておっちゃんは飛車先の歩をつく。 指し手は早い。 (おっちゃん、なんで居飛車なんや?振り飛車党やん。正攻法で正面から潰すつもりか?) そう思ったとき渡瀬が口を開く。 「居飛車ですか、あなたは振り飛車党とお聞きしましたが…。」 (ほんまや、おっちゃん大一番やで…?) 「これはわしの意地や!お前みたいな若造に負けられるか!正面から潰したる!」 「ふふふ…侮られたものですね。では、僕も考えさせていただきます。」 「なにが歩歩歩や、おもんないんじゃ!」 おっちゃんは挑発する。 らしくない。目の前にして、渡瀬の存在感におされているのだろう。 こんなおっちゃんは…はじめてみる。 渡瀬は不気味に笑いながら、32金と上がる。飛車の攻めに対応するためだ。
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