第二章‐戦いの幕開け‐

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二日後、全く荷物が運び出されずにひっそりとしている上田城があった。 当然、秀忠も不審に思って早速開城の催促の使者を昌幸の元へと遣わした。 だが昌幸は使者に会おうとすらせずに、自身は小姓と碁を打ちながら、“一戦お受け致そう”という言葉だけを使者に伝えた。 当然ながら、焦った使者は秀忠の元へ戻り、その報を知らせた。 真っ赤に顔をした秀忠は自分の失態を晒してしまった羞恥と、怒りに身を任せて全軍に攻撃の命令を下した。 ――オォオオ!! 雷鳴のような凄まじい喚声を上げながら、上田城の城壁に大量の雑兵たちが手柄を立てんと意気込んで、取り付く。 城壁の上からは、真田兵達が弓矢と鉄砲を上手く撃ち込んで、敵の進軍を妨げている。 その一方、牧野康成という武将は上田城周辺の田を荒らして敵を誘い出す“青田刈り”を行っていた。 稲が刈られれば、たとえ城を守っても、年貢が無くなってしまう。そうなれば武士は生きていけないので、城を出て田を守ろうとするのである。 それから数十分後、上田城の裏門が開かれ、青田刈りを行っていた牧野隊に向かって、真田信繁隊が突撃を敢行した。
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