第二章‐戦いの幕開け‐

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「それ、民の田を荒らす不届き者を成敗せよ!」 信繁の軍勢、兵数こそ500程と多くは無いものの、甲冑から鞍までも全てが真っ赤に塗られた“赤備え”という精強な部隊であった。 少々反撃に遅れた牧野康成であったが、敵の登場は思惑通りであった為に、すぐに3000の兵で信繁隊を取り囲んだ。 「敵が出て来たぞ!少数じゃ。一気に踏みにじれぃ!」 赤備えの軍勢は500程であったが、六倍もの人数差を物ともせずに獅子奮迅の働きをしていた。 戦況は一進一退を繰り返し、ほぼ互角かと思われたその時。 様々な怒号や悲鳴が飛び交う中、突如として信繁隊は城内へ退却を開始したのだ。 「敵が城に逃げるぞ!追撃せよ!」 康成は馬上で叫んで兵達に指令を出す。兵達も大きな声を出しながら信繁隊を追って、すぐさま城の中へと入り込んで行った。 康成隊から突出した兵が2000程上田城内へ侵入してしまう。だが、猪武者の康成は失敗だと思う事もなく、ただ城を奪う好機程度にしか考えていた。 その時。 辺りに響くほら貝の音のあとに、けたたましい爆発音が鳴り響いた。 千の太鼓を同時に打ち鳴らしたような強烈な爆発音が辺りの空気を切り裂いた。 「な、なんじゃ!何が起こっておるのじゃ!」 「突出した兵2000程が、城内にて爆発に巻き込まれ、壊滅致しました!」 完全に落ち着きを失った康成は、慌てふためいて斥候からの報告を受ける。 自分の失敗に気付いた康成は、すぐに兵達を撤退させる。 「これはかなわん!退却じゃ、下がれ、下がれ!」
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