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それから二日程、秀忠の軍勢は上田城を懸命に攻撃するが、大きな決定打も無く、戦況は芳しくなかった。
本多正信らの智ある将たちは、すぐに上田城攻めを取り止めて、急ぎ大垣にて家康の軍勢と合流する事を進言する。
「むぅ……。だが、ここで上田も落とせずに、のこのこと父上と合流すれば、わしは家督を相続出来なくなってしまう……。」
溜め息を吐きながら秀忠がつぶやくと、本陣の下座の方から信幸が進言をしようと進み出た。
「恐れながら申し上げまする!
我が父、真田昌幸は我らの進軍を妨げれば、それだけで大功でござりますれば、これ以上の城攻めは敵の思う壺かと!」
信幸が必死に諫めようと叫ぶが、秀忠は未だにうつむいて唸り声を上げながら、悩んでいる。
やはり家督のために功を上げたいのだ。
しばらく悩んでいたが、数分の静寂の後に、ようやくその重い口をゆっくりと開いた。
「――わかった。これより大垣へ向かう。
全軍を移動させよ。」
諸将は、それに『はっ』という短い返事をしたあと、甲冑をかたかた鳴しながら、慌ただしく自分の隊へと戻っていった。
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