第二章‐戦いの幕開け‐

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『独立を装い、徳川家に潜入せよ。』 というものである。 あの独立の後は、真田忍集を通して逐一報告や指令を行っていた。もちろん、この事を知っているのは昌幸と信幸、それから真田忍集の中でも数名のみである。 真田忍集筆頭の猿飛佐助もその一人である。 「――な、なるほど……。流石は父上……、良きお考えではありますが……。」 全貌を聞いた信繁は、唸り声を上げながら顎をしきりに触っていた。信繁は未だに分からない事でもあるのだろうか。 「某には、なぜ教えて下さらなかったのですか?知っていれば……。」 「たわけ。おぬしみたいな猪武者に教えてしまっては、たちまち敵に知られてしまうわ。」 「い、いのしし……、でございますか……。」 信繁は不服そうな顔をしているが、昌幸は策が成ったために上機嫌で笑っている。 それから、ふっと小さな息を漏らした昌幸は手綱を強く握り締めた。 「こんな事をしている暇は無いぞ。ほれ、信幸もはよう軍勢の元に戻れ。」 「は、はぁ。」
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