第二章‐戦いの幕開け‐

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昌幸の軍勢二千に、信幸の上野沼田衆の軍勢三千も加わり、軍勢は五千にまで膨れ上がった。これで立派に戦う事が出来る人数になったと言えるだろう。 この時、大垣城の西側、関ヶ原の地ではついに戦いの火蓋が切って落とされていた。 徳川四天王の一人、井伊直政の軍勢が、先鋒を命じられていた福島正則の部隊の横をすり抜けて、先駆けしてしまったのだ。慌てて福島勢も宇喜多勢に攻撃を開始した。 世に言う『関ヶ原の戦い』の始まりである。 東軍の総大将、徳川家康は桃配山に本陣を張り、前線に指示や檄を飛ばしていた。 この桃配山は、遥か昔に皇位継承を巡って争った“壬申の乱”で、大海人皇子が布陣し、桃を配って味方の兵を激励した故事から名付けられたと言う。 その桃配山の北東に、真田家の軍勢が旗印も掲げずに伏せていた。 予め、猿飛佐助に敵の布陣の穴を探らせていた為に敵に発見されていないのだ。 「――ついに始まるのう……。」 「はっ……。」 と、昌幸が呟いた小さな声に信繁が短い返事をする。昌幸は小さく笑う。 「敵本陣は二万、我らは五千。敵増援も考えると、勝機は少ないが、もはやこの世に未練はあるまい。のう、信繁。」 「はっ。この六文銭を背負うてから、既に死は厭いませぬ、必ずや真田に勝利を。」
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