第二章‐戦いの幕開け‐

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「では、死地へと参ろうか。皆の者、恐るべきものは死にあらず。逃げて後世に汚名を残す事なり。 生きようと思えば必ず死し、この地にて死なんと思えば必ず生きるものなり。 ――侵略する事、火のごとし!進めぇ!」 『オォオオ!』 一億の雷鳴のようなときの声が、辺りに劈き、瞬く間に徳川本陣へと届く。 食事を取っていた将兵は何事かと一斉に立ち上がり、辺りを見回す。 見ると、遠くに真田家の旗印、真っ赤に染められた六文銭の旗がゆらゆらと揺れている。 以前、真田家に惨敗したことを雑兵から大将に至るまでの全員が思い出し、震え上がった。 「と、殿!北東にて真田と思われる軍勢が現れましてございます!」 「な、なんじゃと?! 真田が来るという事は秀忠の軍勢はどうしたのじゃ!退却したあと、追撃されたか!」 忍の報告に慌てる徳川家康。もしも迫り来る大名が、他の大名であったのならば、まだ落ち着いていられたのだろう。 だが、あの真田だ。戦国一の食わせ者と名高い真田家なのである。 「秀忠様の軍勢が壊滅したとの報告は入っておりませぬゆえ、進軍が遅れているだけかと!」 「ちっ!あの馬鹿息子めが!」
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