第二章‐戦いの幕開け‐

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「申し上げます!徳川家康殿、ご自害なされましてございます!敵軍はもはや壊滅しておりますゆえ、殲滅の下知を!」 「――家康が自害……?これは思わぬ朗報じゃな。 よし、全軍突撃し、徳川勢を殲滅せよ。」 疾風怒涛のように迫り来る真田勢に、対抗して波に打たれるのは一本の細い杭。まさに戦況は一目瞭然であり、東軍の前線は未だ戦闘を繰り広げているものの、本陣が壊滅しているために、何の意味も成していなかった。 尚も討たれる徳川勢、真田家の一部の兵は戦功を求めて東軍の前線を背後から攻撃している者もあった。 それから数刻の後、ほとんどの東軍諸将は戦線を離脱し、残っている部隊も残りわずかで、更に殆ど壊滅状態である。 三成ら西軍が総攻撃を開始し、次々と討ち取られていたのだった。 「――本多忠勝隊退却!福島正則隊退却!現在、この関ヶ原にいるのは各隊の殿軍のみでございます!」 もはや戦の勝敗は決し、桃配山に悠々と陣取っていた昌幸の元に忍の報告が入った。昌幸はそれを聞いて喜ぶとも悲しむともせず、ただ眉間にしわを寄せて目を細めながら、重々しくうなずいた。 その時、引き下がった忍が再び現れた。 「申し上げます。石田三成殿の家臣が殿に面会を申し出ております。」 「ほう、左様か。通せ。」
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