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それからしばらくして、昌幸の元には漆黒の甲冑を所々、血で染めた屈強そうな男が現れた。眼力は強く、そこ知れない雰囲気を漂わせている。
「お初にお目にかかります。某は、石田三成が家臣、舞兵庫でございます。以後お見知り置きを。」
三成からの使者であろうか、舞兵庫は片膝を突きながら恭しく名乗った。だが昌幸はそれを聞き流すかのように、扇子で兵庫を指しながら言った。
「兵庫殿、前置きはよい。はよ、本題に入って頂けぬか。」
その言葉に、兵庫は一瞬ムッとしたが、ここで反論しても何の利にもならぬため、押し堪えて飲み込んだ。
「はっ。なれば、東軍諸将の仕置を執り行うゆえ佐和山にお越し頂きたいとの言伝でございます。」
「ふん。大将を気取って自らの城に諸将を集めるとはな。
――まあよい。わしも向かうゆえ、三成殿によろしく伝え下され。」
「はっ。では……。」
真田の陣から去って行く兵庫を、しばらく睨み続けた後、昌幸は首実検をしている信繁を呼び寄せた。
信繁は、不思議そうな顔をしながら昌幸の下に戻った。
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