文化祭―アイドルと彼女

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朝、少しながらテンションが上がった状態で家を出た。 入学して二ヶ月も経つと、この長い塀の家の持ち主のことは考えなくなった。 楽しくなかったはずの学校も少しずつ楽しめてきている。 自分に何かしら変化があったのかもしれないけど、それが何なのかはわからない。 そうした感情の原因を探究しているうちに学校に着いた。 正門は大きく文化祭と書かれた看板が飾られており、校舎も見ただけで楽しい気分にさせてくれる。 朝早いというのに人が行き来して忙しそうにしている光景も同じ作用を起こす。 俺はすぐに教室に向かい、みんなの準備を手伝った。 「優樹くんおはよう。今日は早いんだ」 「おはよう。そりゃ文化祭だから、準備しないとな」 早坂はこうして毎朝挨拶をしてくれる。 周りの目は羨ましそうな感じの中に、どこか当然のようなのも混ざっている。 「優樹くん、早紀ちゃんが当番の間だけでも一緒に回れないかな?」 早坂が少し不安そうに尋ねた。 どうして俺にこだわるのか不思議だけど、特に断る理由はないし一緒に歩いているとこっちも鼻が高い。
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