入学―驚愕の出会い

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四月、桜が道を染め鮮やかなピンク色を彩る季節、なんてことを心で考えて自分で笑っている。 それでも、俺の心の中は白と黒しかないモノクロの世界。 その原因は大体わかっている。 一つは過去にちょっとしたいざこざがあったこと、もう一つは左に見える長い壁の家の子。 小学一年生の時の俺ですら可愛いと思えたその子とは一ヶ月ほど遊んだだけなのに、その時のことは今でも鮮明に覚えている。 その一ヶ月の間に交わした約束すらも覚えていて、時々思い出してしまう。 正直、小さいなりに恋心を抱いていたと思う。 だからこそ思い出す度に切なくなり、目の前の世界も暗くなる。 そして高校に入った俺は今、期待なんて物は毛ほども持たずただ歩いている。 周りを見ればピカピカのランドセルを背負った小学生や、楽しそうに笑う人達。 別に変な感情を抱くわけじゃないけど、俺はあんなに楽しそうには出来ない。 こんな無気力な俺だから母さんによく怒られる。 まぁそれも何回も経験すれば慣れてくるし母さんも何も言ってこない。 そんな様々な原因があり歩く足取りは重い。 学校に着いて自分の組を確認するとすぐに向かった。 「はぁ……」 さっきから溜め息ばかり。 頭の悪い俺だから学校の授業も楽しくないだろう。 来てすぐに寝るのもどうかと思ったけど、することもないので寝た。
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