虚像の舞踏会

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     夢を語るにはあまりにも年をとりすぎた、と少女は呟いた。 正確には少女のような眼差しをした僕の祖母。  きっと女性なら誰しもが一度くらいは夢に見るだろう。  白馬に乗った王子様。  祖母や、祖母と同世代の少女たちはそんな夢も見ぬまま、心が純粋なまま、早くのうちに結婚をしたときく。  少女のような瞳を向けながら      握っていた手が緩んだ。  ああ、もう逝ってしまうのか        ゴツンと畳に落ちた手が虚しくも静かに冷たくなってゆくのとは裏腹に あまりにも穏やかに笑うので、王子様でも迎えにきたか。     と。             大好きな家族 永遠なる夢を   大好きな祖母 次はお幸せに   大好きな貴女 苦しまないで 逝けましたか   大好きでした
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