sun-flower the baby

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季節が夏になると、 日だまりの丘がいっそう光り出します。 大きな太陽が上から見守ります。 まるで何かを求めるよう、『小さな太陽』が背伸びをします。 …そして、ある丘の一本のヒマワリから、  何百年に一回、 小さな男の子が生まれると言います。 その丘の近くの街の人々は、その子供をこう呼ぶのです。 『サンフラワー・ザ・ベイビー』 日だまりの下に1人の男の子がいました。 彼は死ぬことが出来ません。 彼はサンフラワー・ザ・ベイビーなのです。 確かに、永遠の命などは、ありません。 『あるモノ』を手に入れたとき、彼も死にます。 でも、彼はもう5回も生まれ変わっていました。 周りにいた同じ身体をした人間は次々に死んでいきました。 死んで、もう二度と彼に笑うことは、ありません。 …彼もまた、人の笑顔など求めていませんでした。 人間が嫌いでした。 殺し合う生き物、求め合う生き物、 欲望をむさぼり、仲間を裏切る生き物。 彼の頭にはそうインプットされていたのです。 裸の太陽が彼の頭を照りつけます。 あの光がある限り、彼は生きられるのです。 少しの曇りや、雪があろうとも、生きるのです。 でも、人間の心は、 あまりにも多くの黒い雲に隠されていて、 素直に受け入れることは出来ませんでした。 太陽の子供は、闇を拒むのです。 でも、生まれてきたモノは仕方ありません。 どこかで生きて行かねばなりません。 どんなにおなかがすいて、苦しくなっても、 彼は…死ねないのですから。
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