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最初に彼はおばあさんの家で生活しました。
寒い季節に入りかけていました。
彼は暖かい場所を求めていたのです。
そこには暖炉がありました。おばあさんの温もりもありました。
彼女は心底この子を愛しました。
…でも、彼はおばあさんが嫌いでした。
太陽の子にとって、『暑すぎた』のです。
どんなに暖かい気持ちが彼女にあろうと、
彼には暑くてたまりませんでした。
暑くなると、人間誰でも心がぼやけます。
そして、疑心暗鬼になるのです。
彼女が包丁で野菜を切っています。
―次は僕を殺すんだ。
彼女が火をくべています。
―僕を今からあそこで焼くんだ。
そうやって、いつの間にか、
彼はおばあさんを避けていました。
おばあさんは寂しい顔をして彼を見ていましたが、
やがてとぼとぼと部屋に入っていきます。
…
一週間後、おばあさんは死にました。
彼は「またか…」と思って家を出ます。
それ以上感情的になることはありませんでした。
彼女の財産はいりません。
太陽がある限り、どこかで生きていけます。
…
次に彼は家族の一員として養子になりました。
そこには若い夫婦がいました。
何かが原因で子どもは産まれませんでした。
なので、いろんな所から養子を貰っています。
彼は8人目でした。
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