見えたキッカケ

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私は金縛りに あったかのように動けず、 それを見るしかなかった。 それは当時5歳の私より 頭一個分大きい子供だった。 上半身は裸で、 下は綿ぽい長スボン、 前髪が目を隠していた。 振り向いて見たかったが、 なぜか写った子供から 目が離せなかった。 その子供が私に言った。 (痛みを知れ) その直後、 まばたきした間に 消えてしまった。 体も動くようになり、 すぐ振り向いたが 誰もいなかった。 目が見えなくなった事、 今まで感じた事のない旋律。 ばあちゃんの言った 『水神様』の話は 本当だったんだ。 その日の夜から、 米粒を茶碗に残さぬ様、 箸でかき集め食べた。 それでもその類の事は 信じられなかったが、 ご飯だけは一粒も 残さない様になった。
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