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それの正体が知れた途端、彼をさっきまで支配していた不安は領土から追い出された。
代わってその領土を興奮が支配した。
今まで戦ったことのない敵である。
テロリストでもジャーナリストでも暗殺者でもない、全く以て力の分からぬ相手だ。
彼が興奮しないわけがなかった。
魑魅魍魎の類はじりじりと彼に近づく。明らかに警戒していた。
普段は見境なく人を襲うそれらが彼を恐れたのである。
だが、それは無理もない話だった。
なぜなら、彼は気の力でそれらの内の幽霊と呼ばれる類を、すでに成仏させてしまっていたからである。
彼ら自身、成仏したかどうかを認識する間もないほどの一瞬の出来事であった。
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