chapter.Ⅷ

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フォーナ以外の全てのものが吸い込まれた空間は無重力になり、取り残された扉がぽつんと浮かんでいる。 やがてフォーナが人の姿に変化し、扉も消え去ってしまった。 『…フォーナ』 ネロにはかける言葉が見付からない。 フォーナの金色の瞳から大粒の滴が溢れ出し、幾つもの美しい水玉が宙に舞った。 孤独を映したその滴は切ない蒼で、ネロの心を奮わせた。 『人間になど成りたくなかった… 欲深く、愚かで、希望に縋らずにはいられない けれど、情け深く、畏くも大胆で、不屈の心を持っている 儚くて美しい生き物』 『どうして人の心は変わってしまうの?私に春の女神の名をくれた彼は もう何処にもいない…』
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