chapter.Ⅲ

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その頃ネロは… (俺…また夢を見てるのか?) 朦朧とする意識、瞳を明けると眩しい光が淡いブルーの瞳に降り注いだ。 頬を撫でる潮風、目を細めるネロの視界が捕らえたのはゴルゴダの丘だった。 (…帰って…来たわけじゃないよな) 花で溢れとても美しい丘、洋館の前に広がる白詰草の花畑で誰かが花を摘んでいる。 (キリエ?) ネロは花を摘む誰かに近付こうと足を進める。花畑にいたのはキリエではなかった。 (トリッシュ…) ネロが傍まで行くと、その女性はネロの影に気付き振り返った。優しそうに微笑み、白詰草で作った冠をネロの頭に乗せる女性。 ネロが何か言おうとした瞬間、突如強い潮風が吹き抜けた。 ザァァァーー!! 風に煽られ白詰草の冠が飛ばされ、と同時に周りの景色も女性も薄れ、光となり舞い散って行く。 「エヴァっ!!」 右手を伸ばし思わず叫んだ名は 初めて口にする名だった。
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