chapter.Ⅲ

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舞い散る光は消え去り、暗闇の中… 放心状態のネロの右手が温かくなり、急激に夢から醒める。 「…今のは」 気がつくとネロは仄暗い場所にいた。チャプチャプと水を掻く音が辺りに響いている。 ゆっくり上体を起こすと二人乗り用の小さな舟の中だった。見渡す限り水が満ちていて舟は幾つもの柱の間をゆっくり進んで行く。 「気分はどう?」 振り返ると見知らぬ女性がネロに微笑みかけていた。深緑のローブを纏い、緩やかに波立つ漆黒の髪に金色の瞳。手元には大切そうに水晶玉が抱えられている。 ネロは不機嫌な顔で尋ねた。 「あんたは?」 「私はフォーナ、貴方はネロね?」 「…さっきの婆さん?」 「えぇ、これが本当の姿なの」 そう言ってフォーナはまた微笑んだが瞳はとても寂しそうだった。 「どうして俺をここに…否、俺に夢を見せたのはあんたか?」
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