chapter.Ⅲ

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二人が顔を見合わせていると舟が静かに止まった。松明の炎で一気に辺りが照らし出される。 フォーナが舟から降りて桟橋に移ると桟橋の端に並んだ松明が次々と燃え始めた。ネロも舟から降り桟橋に移る。 「此処は?」 ネロは辺りを見回しながら尋ねる。 「此処はさっき貴方がいたクラブの地下よ。有史以前には巨大な水脈が流れていたんだけど、段々と水嵩が減り空洞化してしまったの。そこに太陽神を崇めるための神殿が造られた」 フォーナの言ったとおり、あちこちに太陽を模った石像が放置されている。桟橋の下は底が透けて見えて、石像が幾つも沈んでいるのが分かった。 「崇めてたって割にひでぇ有様だな」 「そうね…」 桟橋が終わると大きな扉が現れた。フォーナは手に持った水晶玉を一撫でし瞳を閉じて何やら呟いている。 ネロはフォーナの肩越しにその光景を見ていた。 扉が鈍い音を立てて開くと中から冷たい空気が流れて来て、二人の足元に絡んだ。 フォーナはネロの手を取り、先に進む。
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