chapter.Ⅲ

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悪魔化している右手に何の躊躇もなくふれたフォーナ。その事に少し驚き、ネロは繋がれた手を見つめた。 「こっちよ」 「え…、あぁ」 扉の中は部屋ではなく階段で、地上へ続くかのように終わりが見えない。 ネロはどこまであるか分からない階段を呆然と見上げた。階段を挟む壁は一面凍り付いていて、冷気に満ちている。 階段を上り始めて直ぐネロは信じられないものを目にする。凍り付いている壁は、壁そのものが分厚い氷で…中には悪魔が氷漬けになっているのだ。 「何なんだ…これ」 興味津々で氷壁に左手を伸ばすネロ。 「駄目よ」 フォーナがネロをぐいっと引っ張った。 「コキュートスの氷河を知ってるかしら?罪深き者を永久に幽閉する歎きの川」 「あぁ、地獄の最下層にあるやつだろ?裏切りが最も重い罪とされるとか…」 つまらなそうに答えたネロ、そんな自分を感心したよう見るフォーナの視線がくすぐったかった。
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