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耳の辺りがくるっと外にハネた銀髪を揺らし、庭を駆け回る少年の名はネロ。
淡いブルーの瞳は母と同じで彼の自慢である。
庭には芝生が青々と繁り、色とりどりの花が季節を飾っている。良く手入れされた庭木と花壇、純粋な瞳に映る世界は何処もかしこも愛に満たされていた。
「ねぇルドルフ、お母様は?」
ネロは庭木の剪定をしている初老の男性のシャツを引っ張りながら母の行方を尋ねた。
「ユリア様でしたら、先程画廊でお見かけしましたが?」
「そっか…」
「虫取りはもう飽きたんですか?」
ネロはつまらなそうに屋敷の二階を見た。庭から見える画廊の窓を。
「今日は御本、読んでくれないのかな」
「もう手入れも終わりですし、私が読んでさしあげましょう」
ネロは喜んでルドルフの腕をぐいぐい引っ張る。母に読んでもらうつもりでいたのか、既にお気に入りの本を用意していたのだ。庭で一番大きな木の下は涼しい木陰になっていて読書にはもってこいの場所だ。
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