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普段は風景画しか描かない母がこんな絵を描くのかと驚いて立ち尽くすネロ。
その絵には蒼い悪魔のようなものが描かれていた。既に完成した絵を何度も塗り込んでいるのか、ただの蒼ではなく複雑な色に仕上がっている。
哀しみのようで、怒りのようで…
絵から伝わるものが何なのか分からない。
「ネロ?」
後ろから母の声が聞こえ、我に返る。
「あ…、あの、ごめんなさい!扉が開いたままだったから…」
慌てて母に駆け寄る。
「こんな夜中にどうしたの?眠れない?」
優しく微笑む母にホッとするネロ。
「僕ミルクが飲みたくて」
「じゃあ、私の部屋に行きましょう」
結局、母に絵の事を聞けず画廊を後にした。
何故か触れてはいけないのだと、幼心に察し無言で母の手を握りしめた。
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