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「どうして…」
微かに動くネロの唇。
フォーナは眠りに落ちたネロを連れ先程の神殿の真上に位置する庭に出ていた。
「凍えるような夢ばかり見るのね、貴方は」
フォーナはネロの悪魔化した右腕に触れながら寂しそうに呟く。
その庭は真冬のように何もかもが凍り付いていて、キラキラと音を立てていた。
「いつの時代も人間は変わらない…欲深で浅薄で。私慾のために同族で殺し合う…深紅に汚れた手で賢者の石に辿り着いたとして、その先にある未来なんて」
金色の瞳から零れ落ちた涙。
ネロが静かに目を覚ます。
少し驚いた顔でフォーナの頬に手を伸ばすネロ。
「どうして泣いてるんだ?」
「私も貴方と共に夢を見たから…
ねぇ、何故生きるの?耐え難い痛みで溢れたこの世界にそれ程の価値がある?」
「なんでかな…よく分かんねぇけど。全てを失ったような気がしたのに、それでも生きてる」
「契約者がリンクを開けば貴方は消えてしまうかもしれない…契約者の望み次第で世界は一変するわ。自らが犠牲になると分かっていても彼を止めないのは何故?」
「……」
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