煙草の香り

2/5
前へ
/202ページ
次へ
「まず…、私と彼の出会いを聞いて貰えますか?」 彼女はそう言って年齢より随分と幼い顔で笑った。 私達が向かい合っているのは駅の近くの喫茶店。 駅に近いとは言え、可愛らしい小窓も飾りも無く、若い子達が足を運ぶカフェとは全く別な雰囲気の店だ。 そのため店にはお客は少ない。私達の他には経済新聞を片手にコーヒーを飲んでいる中年の男性と、買い物帰りらしい、やはり中年の女性二人組だけだった。 「ここで良いの?」 私は周りをチラリと見て言った。 一つ席を挟んだ女性二人組の会話がさっきから筒抜けで、これから聞く内容は、この店で話すのはちょっと不味いのでは?と思ったから。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

134人が本棚に入れています
本棚に追加