煙草の香り

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そうやって私が心を冷静に保っている姿を珍しそうに見た彼女は、机の上の煙草ケースを指すと、 「私も一本下さい」 と、微笑んだ。 「華絵ちゃんも吸うの?」 「5年前くらいに止めましたけど、昔は吸ってましたよ」 「へぇ?それこそ意外だなぁ」 ケースを渡すと彼女は細い指で煙草を挟み、少し躊躇いがちに火を付ける。 だが、軽く煙を吸い込んだだけですぐに盛大に咳き込み始めた。 「…っ!やっぱり、もう吸えないですね 「大丈夫?」 「はい、大丈夫です。…とても懐かしい味がしました」 彼女は目尻を指で拭いながら、煙草を灰皿に置いた。
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