プロローグ

2/2
前へ
/3ページ
次へ
「お母さん いってきまーす!」 「いってらっしゃい 麻由」 そう いつもと同じ朝 今日もいつも通り 麻由の幼稚園バスを見送った この後もいつも通り 洗濯機をまわしてから 特ダネを見ながら掃除をして… プルルルル プルルルル 「誰かしら…」 パパが忘れ物でもしたかな? そう思いながら電話に出た 「もしもし 吉岡ですが」 「…もしもし」 予想外の声 電話の先は女の人だった 少し年配の…… そう ちょうど 母ぐらいの年の女性の声 「あの……高橋夏瑠さんでしょうか?」 高橋は私の旧姓だった 「…そうですが」 「あの…突然で申し訳ございません。私 桜井陽平の母です」 「え……?」 「実は――…」 プー プー プー 今頃になって…… あなたの声が 笑顔が 温もりが……… 鮮明に蘇る 「っ……よう…へ…い…!」 膝から崩れ落ちる 涙が頬を伝って 床にこぼれた あの時何かが違っていれば 変わっていたのかな …あの時何が違っていれば 変わっていたのかな あなたに出会ったのは 中2の夏 今日みたいな 雲一つない日だった―… _
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加