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そんな油断ならない状況でありながら、セツナ達は笑っていた。
此処に来るまでアルマは一度も笑わなかった。
笑わないのは解っていた。でも泣きもしなかった。
泣きたいだろうし、王国に帰りたいだろうに……
アルマはまだ4歳。
まだ父に母に甘えたい年齢だ。その彼を、王は……父は苦い表情で、母は泣きながら私に託した。
アルマはその時は泣いたが、それからは泣かなかった。
アルマが泣いていても、自分は救えるのか?
そう考えていたのが杞憂だと思った。
この子は強い。
そう思っていた。
〈タウナ村〉に着いてフォレスの家族の家に厄介になることになった。
そしてフォレスの母に「大変だったね。」と言いながら抱きしめられたアルマは泣いた。
それを見たとき、自分が愚かだと知った。
この子は1人で戦っていたのだ。孤独に、初めての外の世界に。
小さな肩が、静かに泣いてクシャクシャになったその顔が、今まで耐えてきた事を教えてくれた。
私は改めてこの子を、守る事を誓った。
辛い目に合わせてしまった。寂しい目に合わせてしまった。
だから、その分の幸せを作るためにも……守り抜いてみせる。
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