0章 奇襲

11/17
前へ
/687ページ
次へ
そんな油断ならない状況でありながら、セツナ達は笑っていた。 此処に来るまでアルマは一度も笑わなかった。 笑わないのは解っていた。でも泣きもしなかった。 泣きたいだろうし、王国に帰りたいだろうに…… アルマはまだ4歳。 まだ父に母に甘えたい年齢だ。その彼を、王は……父は苦い表情で、母は泣きながら私に託した。 アルマはその時は泣いたが、それからは泣かなかった。 アルマが泣いていても、自分は救えるのか? そう考えていたのが杞憂だと思った。 この子は強い。 そう思っていた。 〈タウナ村〉に着いてフォレスの家族の家に厄介になることになった。 そしてフォレスの母に「大変だったね。」と言いながら抱きしめられたアルマは泣いた。 それを見たとき、自分が愚かだと知った。 この子は1人で戦っていたのだ。孤独に、初めての外の世界に。 小さな肩が、静かに泣いてクシャクシャになったその顔が、今まで耐えてきた事を教えてくれた。 私は改めてこの子を、守る事を誓った。 辛い目に合わせてしまった。寂しい目に合わせてしまった。 だから、その分の幸せを作るためにも……守り抜いてみせる。
/687ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22077人が本棚に入れています
本棚に追加