22078人が本棚に入れています
本棚に追加
/687ページ
しばらくして円柱は消滅した。
そして円柱のあった場所にはタウナ村はおろか、木の一本さえ無くなっていた。
地面はクレーターのようになっており、その異常な威力を物語っている。
全員が呆気にとられていた。
余りに威力が高過ぎたのだ。
全員の魔力をあわせても《守護神の盾》は砕けるかどうかなど分からないのだ。
それにも関わらず、この結果を生みだしたあの魔法。
あり得ない。何か……何かがある。
疑心が再び芽生えてきたが、それは既に遅く。死神の鎌は既に首筋へと添えられていた。
そして、悪夢はやってきた。
あの魔法陣が足下に戻って来ると、それは黒い光を放ち魔法陣から何かが現れる。
ソレは牛のような頭に4本の腕、そして黒い翼。
魔物にしては大き過ぎるが、何者だかなど流石に分からず茫然とする。
「我が名はギガサイト。古の契約により力を貸した者だ。契約通り、頂くぞ」
……契約?頂く?何を?
その疑問は直ぐに解消された。
ソイツは近くにいた仲間を、掴んで無造作に口の中へと放り込んだのだ。
「ィ……ギャアアアアァアァアア」
悲鳴。
混乱。
そして理解。
逃げなくては、死ぬ。本能がソレを理解するものの、既に鎌は首筋へと添えられており──
「逃がさないさ」
赤く染まった口が開く。
口から仲間の腕が、肉片がボタボタと地面に落ちる。
逃げようとしていた者達は捕まれてまた食われる。
そしてナウルは食われる直前に見た。
黒い瞳をギラリと輝かせ、犬歯をむき出しにして笑っているゲルムを。
そして、ようやく気付くことになる。自分達がハメられた事に。
「クッソぉがああああああああああああ」
「じゃあな、ナウル」
悲鳴は、消えた。
─── † ───
「この度は我が願い叶えて下さった事、心より感謝いたします」
「別にかまわないさ。久々の召喚には驚いたがな」
そう言って笑うギガサイトの口からまた肉片が飛ぶ。
「さて、貴様の名は」
「ゲルム・アルファリアスと言います」
「ではゲルムよ、貴様に我が力の片鱗を渡そう。与えられた、魔力と贄に値するだけの力を」
そう言ってギガサイトは黒い光をゲルムへと与えると、その場から消えた。
後には、赤い瞳のゲルムが残る。
魔法陣も飛び散った仲間の血も肉片も全てが無くなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!