0章 奇襲

16/17
22078人が本棚に入れています
本棚に追加
/687ページ
しばらくして円柱は消滅した。 そして円柱のあった場所にはタウナ村はおろか、木の一本さえ無くなっていた。 地面はクレーターのようになっており、その異常な威力を物語っている。 全員が呆気にとられていた。 余りに威力が高過ぎたのだ。 全員の魔力をあわせても《守護神の盾》は砕けるかどうかなど分からないのだ。 それにも関わらず、この結果を生みだしたあの魔法。 あり得ない。何か……何かがある。 疑心が再び芽生えてきたが、それは既に遅く。死神の鎌は既に首筋へと添えられていた。 そして、悪夢はやってきた。 あの魔法陣が足下に戻って来ると、それは黒い光を放ち魔法陣から何かが現れる。 ソレは牛のような頭に4本の腕、そして黒い翼。 魔物にしては大き過ぎるが、何者だかなど流石に分からず茫然とする。 「我が名はギガサイト。古の契約により力を貸した者だ。契約通り、頂くぞ」 ……契約?頂く?何を? その疑問は直ぐに解消された。 ソイツは近くにいた仲間を、掴んで無造作に口の中へと放り込んだのだ。 「ィ……ギャアアアアァアァアア」 悲鳴。 混乱。 そして理解。 逃げなくては、死ぬ。本能がソレを理解するものの、既に鎌は首筋へと添えられており── 「逃がさないさ」 赤く染まった口が開く。 口から仲間の腕が、肉片がボタボタと地面に落ちる。 逃げようとしていた者達は捕まれてまた食われる。 そしてナウルは食われる直前に見た。 黒い瞳をギラリと輝かせ、犬歯をむき出しにして笑っているゲルムを。 そして、ようやく気付くことになる。自分達がハメられた事に。 「クッソぉがああああああああああああ」 「じゃあな、ナウル」 悲鳴は、消えた。 ───    †    ─── 「この度は我が願い叶えて下さった事、心より感謝いたします」 「別にかまわないさ。久々の召喚には驚いたがな」 そう言って笑うギガサイトの口からまた肉片が飛ぶ。 「さて、貴様の名は」 「ゲルム・アルファリアスと言います」 「ではゲルムよ、貴様に我が力の片鱗を渡そう。与えられた、魔力と贄に値するだけの力を」 そう言ってギガサイトは黒い光をゲルムへと与えると、その場から消えた。 後には、赤い瞳のゲルムが残る。 魔法陣も飛び散った仲間の血も肉片も全てが無くなっていた。
/687ページ

最初のコメントを投稿しよう!