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音さえ溶ける様な夜だった。
森のなかを進んで行く集団がいた。暗闇の中、黒いフード付きのローブを着込んでいる。異様な集団なのは間違いないだろう。
自分達以外の全てが死んでしまったような錯覚を覚えるほど、森は静かだ。
空は暗く、月は見えない。不安感を煽るには十分過ぎるほどの静けさ。
だが、彼らは興奮していた。 厳密に言えば、集団の先頭にいる男ゲルム・アルファリアスは、だが。
ゲルムは『この先の村には敵国、カタームの王家が逃げ込んだ』という、報告を聞いた時チャンスだと確信していた。
『手柄を立てられる』
『出世出来る』
自分にやってきた突然のチャンス……必ず掴んで見せる!!
腹の中で渦巻く野心が彼の身体を突き動かしていた。
彼は興奮している事を悟られまいとはしている様だが、その眼はギラついていてとてもじゃないが冷静には見えない。
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