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「なるほどね。 君が妻や麗子が言っていた 涼の彼女か。」 「な…。」 「この間、食事に行ったと 涼が言っていなかったか?」 あ…。 そういえば言ってた。 「涼は随分と表情が豊かに なった。感情も、だ。 君のおかげだな。」 にっこりと笑うその顔はただの 感謝とは受け取らない。 「なにが言いたいんですか?」 「余計なこと、してくれたね。 表情も、ましてや感情なんて いらないだろう?」 「いると思いますけど。」 睨みつけると愉快そうに 笑われた。 「感情なんて下らないよ。 多くの人間が失敗する理由は 感情のせいだ。 その不確かなものに左右され 間違いをおかす。 なんて愚かなのだろうな。」 「…っその不確かなものが 人間にとって一番大事だと 思いますけど。 降ろしてください。 自分で行きますから。」 また涼の父親は愉快そうに 笑うだけだった。 .
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