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「あぁ、君。」 「…、なんですか。」 「涼とは別れなさい。」 「あなたに指図を受ける気は ありません。」 そんなこと言わないで。 「いくらがいい?」 「は?」 「涼の値段はいくらだ。」 「…馬鹿にしないでください!」 扉を思い切り閉めて、私は歩く。 高槻さんが戸惑った顔をする。 「…涼様が望んだことでは ありません。」 ポツリとそれだけ言うと 車に戻ってしまった。 涼。 どうすればいいの? 分かってる。 涼が悪いわけじゃない。 涼が望んだことじゃない。 でも。 「…くじけそう、かも。」 世間で涼の婚約者は私じゃない。 涼の隣にいるのは私じゃない。 悔しい、悲しい。 なんとなく作ってしまった 二個目の大きなお弁当。 それが。 余計に虚しかった。 .
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