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「あ…美智先輩。」 下駄箱で声に振り返れば。 「結城くん?」 「おはようございます…。」 珍しく結城くんが言葉を濁す。 なんか。 それすらも虚しい。 「結城くん、これ、あげる。」 かばんの中から取り出したのは。 「お弁当…ですか?」 「結城くん食べていいよ。 口にあうか分からないけど。」 「涼に渡すんじゃ…?」 にっこり笑う。 わざとらしかったかもしれない。 「いーの。 なんか…疲れちゃったし。」 結城くんは目を見開く。 「涼を…捨てるんですか?」 その言葉に自嘲気味に笑う。 「…私が、捨てられるんだよ。 知ってるでしょ?」 「違っ!」 「…ごめん。」 私は逃げるように自分の教室へ むかう。 傷付くのが怖くて。 逃げてる。 自分が大事で、逃げてるんだ。 .
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