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「ちょっと…どいて。」
初めて間近で聞いた佐久間君の
声は冷たいのに甘い声だった。
「なぁ…あいつ近付いてない?」
慎也が私の服の袖を引っ張る。
うん。
近付いてる。
私に向かって。
「…松原 美智。」
「は…はい?」
背、高い。スタイルいいなぁ。
下からそろり、と佐久間くんの
顔を覗きこむと。
やっぱり綺麗な顔。
あ、思ったより優しい瞳。
「…付き合え。」
長い沈黙が確かにあった。
「…佐久間様。
ご乱心したかな?」
やっと出た言葉はそれだった。
「…してない。
俺、冗談、嫌いだ。」
軽く睨み付けられて。
「ごめんなさい。
えーと…でも、その。」
「…なにが不満?」
表情も声色も変わらないまま
静かに見下ろしてくる。
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