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明はごそごそと、押し入れから必要な荷物を取りながら、何回目かの溜め息を吐いた。
今夜のことを考えると、どうしても憂鬱な気分になる。
「どうしたの?」
明の後ろで、座ってお茶を飲んでいた母親が、怪訝そうに尋ねてきた。
40をだいぶ前に過ぎた母だが、実年齢よりも10以上若く見られることもあるほどのその容姿は、友達からはよく羨ましがられる。
「い、いや。何でもないよ」
あわてて振り向くと、取り繕うように答えた。今日の企みを知られれば、確実に叱られる。上手くごまかさなければならない。
「そう?」
あまり腑に落ちてはいないようだが、遠慮したのか母はそれ以上は訊いてはこなかった。
とりあえずはごまかせたらしい。
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