はじまり

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ミッドガルドと言えば、この大陸の名前だ。 過去の破壊大戦の遺跡がいたるところにあり、洞窟がいくつも掘られている。 その一つに、ドラゴンが住んでいた。 薄暗い洞窟の中を、鎧を見に纏った騎士が進んでいく。 右手に剣を持ち、左手に松明を持っている。 「……」 神経を張り詰め、目の前の闇を見つめて歩く。 百足が地面を這っていたのが気持ち悪い。 洞窟に住み着いたドラゴンの討伐。 駆け出し騎士にはかなり厳しいが……強いドラゴンならそもそもこんなちっこい洞窟に住み着かない。 強いドラゴンや悪魔などは、目玉の飛び出るような一等地に『ドーン』と城を構えるものだ。 ふと、一本のロープが張られていることに気づく。 視線を上に向けると、釘鉄球がロープで留めてあった。 ロープを切ると鉄球が『ズドン』とくる仕掛けだ。 騎士はフッ、と鼻で笑い、ロープを跨いだ。 ずぼっ。 「へ?」 二重罠だ。 跨いだ右足が膝くらいまで沈む。 姿勢がぐらつく。 左足がロープに触れ、簡単に切れてしまった。 「しまった!」 もうダメだ……。 騎士はそう思って目を閉じた。 50キロはありそうな釘鉄球が、騎士の頭を粉砕……しなかった。 「……?」 上を見ると、釘鉄球はロープに繋がったまま揺れ動いている。 「不発?」 長いこと放置された罠にはよくあることだ。 騎士は急いで右足を抜き、その場を退く。 ほっと胸を撫で下ろしたところで……視界のはしを何かが閃く。 槍だ。 そう思った時には、若い騎士の胸に槍が突き刺さっていた。
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