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「お客さん、着きましたよ」
フォックスがお客のいる後部座席へ目をやる。後ろでは、母親の膝に子供(二人とも)が寝ていた。フォックスは声をかけたことを謝ったが彼女は「ぜんぜん良いですよ」と優しく答えてくれた。
「ううん、僕もスターフォックスになるんだ・・・Zzz」
子供の言葉にフォックスは満面の笑みをこぼした。
「あの、もしかしてフォックス・マクラウドさんですか?」
予期せぬ言葉に驚いたフォックスは表情が固まってしまった。
「いえ、人違いですよ」
「そう、そうですよね。私ったら何を考えているのかしら?あんなすばらしいヒーローがこんなところにいるはずないもんね」
フォックス・マクラウドは現にここにいる。だが、自分がフォックス・マクラウドとは言いたくなかった。このような子供が憧れを抱いているのにこんな所でタクシーの運転手をやっているなんて知ったら失望することぐらいフォックス自身も理解していた。
「お釣りはいいです」
フォックスは渡された金額と運賃の差に戸惑った。
「えっ、悪いですよ」
「いいのよ、深夜にはちょっと早いけどサービス料として受け取って」
「どうもありがとうございます。気をつけてお帰りください」
「ありがとう」
母親は子供を抱えてタクシーから降り、駅へと歩いて行った。夜でも人通りが多く、活気づいたリバールはお客を乗せるにじゃ絶好のポイントだともいわれている。そのため、ライバルも多く喧嘩になったりすることも少なくなかった。フォックスは自分のタクシーをほかの会社のタクシーの後ろへと寄せた。
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