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「ところで、おぬしは娘を見たことがあるな?」 「はい。王宮にいる頃ではございますが。」 「娘はあの頃と変わらぬ黒髪だ。わしの面影もある。同じクラスになるよう手配しておいたし、きっと編入すればすぐに分かるだろう。 この護衛任務は極秘だ。娘のみならず一般人にもおぬしの目的がばれぬようにな。 以上であるが、異存はないな?」 「勿論です。このような重大な任務を任せていただくこと、恐悦至極にございます。」 「では下がってよいぞ。」 「それでは、失礼致しました。」 ツバサは立ち上がり、深々と一礼すると踵を返して部屋を出ていった。 向かった先は、王宮の一角にある騎士隊員の寮のようなところ。 ツバサの部屋もここにある。 扉の前に立つと左手を取っ手のない扉に添えた。すると扉に取っ手が形成されていく。 ツバサはそれを握り、戸を開けた。 部屋の中は乱雑としており、荷造りや整理の途中であることがうかがえた。 ツバサはその中でも一際物がある一角に腰を降ろすと荷造りを始めた。 「ついに、明日か…。」 呟いた独り言は空気に溶けていった。
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