大将

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私がその店の常連になるのに時間はかからなかった。 ずっと、この店の夢子さんと話すのが楽しかった。 私は夢子さんのことを″大将″と呼んだ。彼女もその呼び名を気に入ってくれているようだった。 出会って1月もたたないうちに、私たちはずっと昔からの知り合いみたいに、仲良くなった。 私は大将の店が終わった後、彼女を行きつけのスナックに連れて行った。人にはあまり教えたくない特別な場所だったけど、むしろ、大将には知って欲しかった。 「ユカリちゃんは何でお酒を飲むの?」 「……お酒の場では別の自分になれるから、ですね」 大将の問いに私はそう答えた。お酒の場というか、地球に来てからずっと、身分を偽っているんだけど。
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