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花火大会当日。
私たちが着いた時、会場はすでに人でごった返していた。ずらりと並んだ出店はどこも長蛇の列。
初めて見る光景に圧倒されていた私の目の前に、紙コップが差し出された。
「ビール。乾杯しよ」
大将がいつの間にかビールの入った紙コップ片手に立っていた。みんなで乾杯をして、ビールを飲んだ。花火が始まるまでまだ15分ほどある。
「若手組、おつまみ買ってきて」
焼き鳥・夢子のおかみさん、つまり大将のお母さんがそう言った。私と大将が焼き鳥を買いに行くことになった。あの長蛇の列に並ぶのかと思うとげんなりしたけど、仕方ない。
何とか焼き鳥をゲットし、みんながいる所に戻る段になってにわかに周囲が混みだした。
進むべき方向が分からない。うろたえる私の手を大将がつかむ。
「ほら、大丈夫か。こっち」
柔らかい大将の手。つないだ手から高鳴る鼓動が伝わりはしないかと緊張する。
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