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ピピッピピッ……
遠くから機械音が聞こえる。
だがそんなものは無視に限る。
そして俺は再び意識を手放……
せなかった。
何かが砕け散るような強烈な破壊音と共に俺は目を覚ました。
「な、何してんだよ!」
「何してんだよじゃないわよ!
あなたを起こす能力のない、役立たずで、置いとく意味のない目覚まし時計を壊してあげたのよ!
いつもこうやって起こしに来なきゃいけないじゃない!!」
(それって目覚ましが悪いんじゃなくて俺のせいなんじゃ……)
さも当たり前のように話す、考え方がめちゃくちゃな女性は俺の母親で、名前は“速水琴美”。近所では美人ママとして知られていて、俺も認めてはいるが今は違う。
ベッドに横になったまま、恐る恐る母親の手を見ると、その小さな手にはそぐわないかなり大きめな金槌が握られていた。
そして母さんの横に散らばる残骸を見た俺は命の危険を感じ慌てて起き上がった。
「そもそもあんたね!私がこうやって毎朝起こしに来なかったら間違いなく夜まで寝てるわよ。それに……」
話が長くなりそうなので俺は枕元においてあった説教回避用の耳栓をつけ、ダイニングのある一階へと降りた。
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