第三章

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郷田が手を振って俺達を見送ろうとしていた。 その時 「あれ?手が……」 郷田は両手を握りしめられた時の状態のまま手を動かせなかった。 「じゃあね。それはプレゼントだよ」 俺は鬼との最後の別れを済ませた。 「こら!待て!この手をどうにかしろ!」 郷田の悲痛な叫びが後ろから聞こえてきたが、そんなのお構いなしに慶太と一緒に帰った。 「最後の最後まであいつに捕まんなかったな」 慶太が帰り道に呟いた。 「卒業式の日にあいつが絶対に捕まえに来ると思ってちゃんと用意しといたよ」 「あいつに何したの?」 「よくお弁当についてくる醤油が入ってる小さなプラスチックの容器に、いつもの特製接着剤をいれておいたんだよ。手紙もらって驚いてるあいつが、ポケットの中で小さな赤い蓋を開けてることに気づくわけないから、後は手に置いて両手を外側から握れば中で潰れて、万が一気づいたとしても両手を外から握られたら、外から押す力の方が普通は強いから中々手を離せないというわけだよ。最後は俺があいつを捕まえて完全勝利だったな」
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