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「最後まで抜かりないな。普通の時なら違和感だらけだけど卒業式という日に、お前みたいな遅刻常習犯から手紙なんてもらったら、あのお人好しの郷田なら手紙の後に手に渡されたものがトラップだとは思わないだろうな」
慶太は愉快そうにそう言った。
「あいつがお人好しなやつじゃなかったら俺も捕まってただろうな。俺だったら手紙自体怪しんで受け取らないもん。
まあなんだかんだ言ってあいつのこと嫌いじゃないけどな」
「確かに手紙を受け取った時点でお前の作戦はだいたい成功だったな。
おっと!もう着いちゃったか……
お前と中学生として一緒に下校するのはこれで最後だな」
慶太の楽しそうな顔が一瞬で寂しそうな顔に変わった。
「家も近いから寮生活だけど、いろいろな場面で会えるよ。きっと」
「そうだな。これからはしばらくの別れだけどお前とは何があっても一生親友だ」
俺の家の前で慶太は笑顔で言い、右手を差し出した。
「ああ、もちろんだ。これからもよろしく」
俺は慶太の右手をしっかり握り、別れを済ませた後、家の中へ入った。
俺が帰った後、家では卒業のお祝い会のようなものが開かれ、両方の祖父母も来て楽しい時間を過ごした。
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