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その足音は木造建築物であるこのおんぼろ校舎の寿命を削るかのように、どたばたと近づいてくる。
そして、その音が彼女の近くで止まったかと思うと、勢いよく教室の扉が開いた。
そこに現れたの眼鏡をかけた青年。
彼は彼女の姿をその黒い瞳で捉えると、大きく口を開けて言い放った。
「アヤカさん!大変ッス!」
どたばたと廊下を走ってきたためか、彼の息は少し上がっていた。
しかし、彼女ーーーーーーアヤカは彼がどんなに苦しんでいようが、同情のかけらも送るつもりはなかった。
至福の時をいつでもぶち壊すこの青年をアヤカは快くは思っていなかったから。
まぁ、仕事なんだから、当然っちゃ当然なんだけれど。
よく考えたら仕事しない彼女がいけない。
「何ですか?今は授業中ですよ?
いつも、静かにしてくださいっていってるじゃないですか」
アヤカはやや不満顔でその青年を見つめた。
勿論、いらつきをアピールするために目は細め、冷たい視線で。
そんな彼女の殺気のこもった眼差しを肌で感じた彼は、ハァハァ言いながら教室の隅々まで見渡す。
その目には幸せの一時を奪われたアヤカと子供達の冷たい顔が映っている。
だが、彼はまさにそんなことはどうでもいいと言わんばかりに目を見開き、アヤカに詰め寄っていった。
(……近いって。
セクハラで訴えますわよ?)
アヤカの評価を下げつつ。
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