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「そんなことはどーでもいいッス!とにかく早く来て下さいよ。詳しいことは移動中に話しますから」
(あ、私の予想、当たり。
どーでもいいって言った)
とにかく慌てた様子の彼は早口でそれらの語を言い並べると、アヤカの手首を掴み、一気に引っ張ってくる。
悲しいかな、こんな時自分が女性であることを恨めしく思うアヤカだった。
別にゴリラみたいにずんぐりむっくりな体型をしているわけでもない普通の体型の彼女は、青年の一引っ張りで簡単に引き寄せられてしまった。
そして、悲しき別れの時。
引っ張られ、教室の外に出されようとしていた彼女は振り返り、子供達を見た。
子供達の大半は「またか」と言わんばかりの表情を浮かべていたが、構うものかと奮起し、
お決まりの言葉を口にする。
「助けてぇー!魔王に連れてかれますー!勇者様ー、助けてー」
……無論、もはや誰も反応してくれてはいない。
彼女の恒例行事と化しているからだ。
(初めてこのネタやったときは皆大盛上がりで、この上司を引きずる無礼な青年をたたきのめしてくれてたのになぁ。
流石に十回越えたら飽きちゃうか)
慣れとは怖いものであると考え、満足げに頷く。
青年に引きずられながら。
「自分で歩いて下さいよ。子供達、見てますよ」
「皆ー!明日も元気に登校してきてねー!」
「……聞く耳持たずッスか」
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