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「遭難者……?どこの人ですか?身分を証明するものは?」
「ないですね。マイルズ少佐が現場を見てますが、そんな報告は聞いてません」
それを聞くや否や、アヤカの顔はみるみる不機嫌になっていく。
理由は簡単。
自分の行く意味があまりないと悟ったからだ。
(マイルズ少佐がいるんなら、私なんか呼ぶ必要ないのに……
貴重な時間を無駄にされた気分)
思わず大きなため息をつく。
「そうため息なんかつかないでくださいよ。少佐本人が言ったんですよ。アヤカ大佐を呼んでこいって」
言い訳がましくカインは弁解した。
アヤカという扱いづらい生物と長年仕事を共にしてきた彼にとって、彼女の機嫌を損ねることがどれほどまずいかは経験で熟知している。
また、その扱い安さも熟知していた。
「わかりましたよ。今度担当代わりますから。ため息つくのやめてください」
これはアヤカを操る最強の呪文。
なかなかのリスクも背負うことになるが、まぁ不機嫌な上司の相手をするよりは十倍マシだろう。
唱えられた本人はさっきまでの暗雲はどこえやらで、笑顔をつくった。
「やったー!忘れたら、減給ですからねー!」
リスクはやはり存在した。
ハイテンションになったアヤカと入れ代わるように今度はカインが頭を垂らす。
「……うわ。リアル過ぎて笑えないッス」
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