第一話

11/39
前へ
/83ページ
次へ
  カインの指差したところは今現在いるところから少し離れた砂浜。 波が一定のリズムをきざんで打ち寄せる、そんなところ。 そこに人だかりが出来ている。 どうやらアヤカたちの目指すところはあれで正しいようだ。 それがわかるとアヤカはまたしてもため息をつく。 (もっと大袈裟なもんだと思ったのに……) そう、目の前にはただ人が群がっているだけ。 難破船も、水死体も、彼女が予想していたものは何もなかった。 それに尚更自身のいる意味を見失い、彼女は一度上げたはずのテンションを再び下げた。 けれど、ここまで来たからにはなにかをしなければならない。 子供たちと過ごす以上のドキドキ、ワクワクをひたすら願う彼女。 そのままじっとしているわけもなく、砂でジャリジャリうるさい砂浜の上を歩いていく。 そして、やじ馬のはびこる人だかりの前に到着した。 「ちょっとー、どいてくださーい。どいてくださーい」image=233608065.jpg
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加